2013年04月04日
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三百字小説『司会の魔球』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 魔球投手は卒業後に司会者になった。

 あちこちのイベントに借り出されてはマイクを持ってトークした。

 ある日、昔の仲間が司会者を訪れた。

 「どうしても負けられない草野球の試合がある。魔球を投げてくれ」

 しかし、司会者は首を縦に振らなかった。「伝説は伝説のままにしておく方が良い」

 昔の仲間は、あの魔球はトリックではないかと疑った。そこで、強引に魔球を投げざるを得ない状況を作り出した。

 司会者は魔球を投げた。

 トリックなどどこにもなかった。

 しかし試合には負けた。

 とっくに攻略法が編み出されていたからだ。

 「くそっ! 誰が魔球のネタバレしたんだ」

 すると司会者は答えた。「オレ……、司会のネタに聴衆の前で」

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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